ちくわは焼くだけのものに非ず

2018年3月05日
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さて、今回は、少し固い内容となりますが、竹輪について触れてみたいと思います。

蒲鉾が初めて古文書に登場したのは、平安時代の1115年のことで、その形状は、今の竹輪状のものだったということは、よく知られています(平安時代版行:類聚雑要抄による)。

ちくわというと、”焼ちくわ”が一般的ですが、”蒸しちくわ”というのもあります。歴史も古く、1798年(江戸時代後期・寛永10年)に刊行された四条家流草献立部類集の中に、「竹輪かまぼこ:らう竹(キセルに使う竹管、羅宇竹のこと)のごとき竹にかまぼこのすり身を付、せいらう(蒸籠)にてむし、又は湯煮いたし、さっと面を焼、心任に切形いたす也。」とあり、この時代から蒸しちくわがあったことが伺えます。

現在、残っている蒸しちくわは、明治の初めころから鳥取地方で作られ始めた豆腐ちくわが代表格です。すり上がり身に豆腐とでん粉を練り合わせ、それを焼かずに蒸してちくわを作ったものです。蒸して作るために、豆腐特有の風味やソフトな食感を持っていることを特徴としています。

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関東地方、特に東京には、”白ちくわ”なるものも存在します。近海で漁獲される魚やグチなどを使って作られていましたが、今では、冷凍すり身から作られます。すり身を棒に巻き付けた後に表面を固め、すだれで巻いたものを湯の中で煮る。冷却後、すだれを外し、表面を乾燥させ、棒を引き抜いて完成です。

おでんや吸い物の種として大いに使われましたが、残念なことに、最近では、東京で白ちくわを生産する業者がほとんど見られなくなっています。

ところで、一部に熱狂的なファンが存在するという”ちくわぶ”は、この白ちくわの代用品といわれます。

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食品衛生法の中に魚肉ねり製品の定義および分類の記載があり、むし竹輪が例示されています。

<参考文献>
1.かまぼこの歴史、清水亘著、日本食料新聞社、昭和50年11月25日発
          行
2.食材図典Ⅱ、小学館、2001年4月10日発行

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